忙しい共働き夫婦が実践する 夫婦で立てたお金の計画を習慣化する方法
夫婦で話し合ったお金の計画 なぜ継続が難しいのか
共働きで仕事も家庭も忙しい日々を送る中で、夫婦でお金の話をする時間を作り、将来に向けた計画を立てることは容易なことではありません。ようやく時間を確保し、お互いの意見をすり合わせ、目標や計画を定めたとしても、その計画を日々の生活の中で継続していくことには別の難しさが伴います。
「一度話し合ったけれど、その後どうなったか分からない」「具体的なアクションが決まっていたはずなのに、いつの間にか立ち消えになってしまった」といった経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。これは、特別なケースではなく、多くの夫婦が直面する課題と言えます。
計画が継続できない主な理由としては、以下のような点が考えられます。
- 時間の不足: 日々の忙しさの中で、計画実行のための時間を確保したり、進捗を確認したりすることが難しい。
- 計画の不明確さ: 話し合いで大きな方向性は決まったものの、具体的な「誰が何をいつまでにするか」が曖昧になっている。
- 情報の散逸: 話し合いの内容や決定事項が記録されず、あるいは共有しやすい形で管理されていないため、確認が難しい。
- モチベーションの低下: 短期的な成果が見えにくいため、計画に対する関心や実行への意欲を維持することが難しい。
- 役割分担の曖昧さ: どちらか一方に任せきりになってしまったり、互いに「相手がやるだろう」と考えてしまったりする。
これらの課題を乗り越え、夫婦で立てたお金の計画を着実に実行し、将来の目標達成に近づくためには、計画を「話し合うこと」だけでなく、「継続すること」に焦点を当てた工夫が必要です。これは、特別なスキルや時間を要するものではなく、少しの意識と仕組み作りで実現可能です。
継続力を高めるための考え方と具体的なステップ
夫婦のお金の計画を継続可能なものとするためには、話し合いで決定した内容を「習慣」として日々の生活に組み込む視点が重要です。壮大な計画を立てることも大切ですが、それ以上に、小さくても確実に実行できるステップを設定し、定期的に振り返る仕組みを作ることが効果的です。
以下に、継続力を高めるための具体的なステップを提案します。
ステップ1: 計画とアクションを「見える化」し共有する
話し合いで決まった将来の目標、それに向けて実行することにした具体的なアクション(例: 毎月〇万円を投資に回す、固定費の見直しとして〇〇の手続きをするなど)を、夫婦でいつでも確認できる形で記録します。
- 方法の検討: 共有可能なクラウド上のスプレッドシート、家計管理アプリのメモ機能、共有カレンダー、あるいは物理的なノートなど、夫婦にとって最も使いやすいツールを選択します。
- 記録内容: 目標金額や期限、具体的なアクション項目、それぞれの担当者、期日などを明確に記録します。抽象的な表現ではなく、「〇月〇日までに△△銀行のNISA口座開設を申し込む(担当:夫)」のように具体的に記述します。
ステップ2: 小さな「習慣化アクション」に落とし込む
一度に多くのことを変えようとすると挫折しやすくなります。計画を実行するためのアクションを、日々の生活の中で無理なく取り組める小さな習慣に分解します。
- 例: 「家計全体を見直す」という大きな目標に対して、「毎日寝る前に5分だけ家計簿アプリに入力する」「週に一度、夫婦でレシートを整理する時間を持つ」といった具体的な行動を設定します。
ステップ3: 定期的な「振り返り」の機会を設ける
計画が順調に進んでいるか、あるいは課題はないかを確認するために、定期的な振り返りの時間を設けます。これは「家計会議」のように改まったものでなくても構いません。
- 頻度と時間: 忙しい共働き夫婦の場合、最初は週に5分〜10分程度でも十分です。例えば、週末の朝食時や、寝る前のリラックスタイムなど、夫婦が落ち着いて話せる短い時間を選びます。
- 振り返り内容: 記録した計画を確認しながら、「先週決めた〇〇はできたね」「△△が少し遅れているけれど、何か困っていることはある?」といった声かけを行います。進捗の共有だけでなく、お互いの努力を認め合うことも継続の大きな力となります。月に一度、もう少し時間を取って全体の進捗を確認し、必要に応じて計画を微修正することも有効です。
ステップ4: 変化への対応と柔軟な見直し
人生には予期せぬ出来事がつきものです。収入の変化、ライフイベント、価値観の変化などにより、最初に立てた計画が現実と合わなくなることもあります。継続とは、ただ計画を守り続けることではなく、状況に合わせて計画を柔軟に見直し、調整していくプロセスでもあります。
- 話し合いの機会: 振り返りの際に、現在の状況と計画との間にズレがないかを確認します。もし大きな変更が必要な場合は、改めて夫婦で話し合い、新しい計画を立て直します。この話し合いの際も、お互いを尊重し、なぜ変更が必要なのか、新しい計画で何を目指すのかを丁寧に共有することが重要です。
実践事例:忙しい共働き夫婦の習慣化
Aさんご夫婦は、以前はお金の話を避けてしまいがちでしたが、将来への漠然とした不安から、一度時間を取って話し合い、教育資金と老後資金の目標額を設定し、毎月の貯蓄・投資額を決めました。しかし、その後の実行は続かず、しばらくして話し合いの内容も忘れてしまっていることに気づきました。
そこで、ご夫婦は以下の工夫を始めました。
- 計画の見える化: 話し合った内容と毎月の具体的なアクション(例: 貯蓄用口座への振込、投資信託の積立設定)を共有スプレッドシートにまとめました。
- 短い振り返り: 毎週日曜日の夜に、その週の家計簿入力と計画の進捗(スプレッドシートを確認)を一緒に行う時間を10分だけ設けました。「今週は外食が多かったね、来週は少し控えめにしようか」「投資の積立は滞りなくできているね」といった短い会話を交わすようにしました。
- 達成の共有: 月末には、目標額に対してどれだけ進捗したかを確認し、目標達成率が一定を超えたら、ささやかにお互いを労うようにしました。
この取り組みを始めてから、計画の実行漏れが減り、お互いが計画に対してどの程度コミットしているかが分かりやすくなりました。短い時間でも定期的にお金に触れる習慣ができたことで、漠然とした不安も軽減され、夫婦間の信頼感も増したと言います。完璧に計画通りに進まない週があっても、次の週に軌道修正することを自然に受け入れられるようになったことも大きな変化でした。
まとめ
夫婦で立てたお金の計画を継続することは、一見難しく感じられるかもしれませんが、それは特別なことではありません。大切なのは、一度決めたら放置するのではなく、日々の忙しい生活の中に「継続するための仕組み」を意識的に組み込むことです。
話し合った内容を記録し共有すること、小さなステップに分解して取り組むこと、そして何よりも、短い時間でも良いので定期的に夫婦で「振り返り」の機会を持つことが、計画を習慣化し、着実に目標へと進むための鍵となります。
完璧を目指す必要はありません。時には計画通りに進まないこともあるでしょう。しかし、そこで諦めるのではなく、「どうすれば継続できるか」を夫婦で協力しながら考え、柔軟に方法を調整していく姿勢こそが、長期的な視点でお金の計画を成功させ、夫婦円満を維持するために最も重要と言えるでしょう。お互いを尊重し、支え合いながら、一歩ずつ進んでいくことを目指しましょう。