夫婦それぞれの「おこづかい」どう決める? 範囲とルール、円満な話し合い方
共働きで忙しい日々を送る中で、夫婦のお金の話し合いは避けられない一方で、時には感情的になりやすいテーマでもあります。特に、家計全体の管理とは別に、夫婦それぞれが「自由に使えるお金」、いわゆる「おこづかい」の範囲や金額、ルールについて、どのように決めれば良いのか悩むケースは少なくありません。
共有の財布がある場合でも、個人の裁量で使えるお金があることは、日々の小さな楽しみやリフレッシュに繋がり、充実した生活を送る上で大切な要素となり得ます。しかし、その線引きや金額設定があいまいなまま進んでしまうと、「何に使ったの?」「それは家計から出すべきでは?」といった疑問が生じ、それが積もり積もって夫婦間の不信感や衝突の原因となることもあります。
ここでは、共働き夫婦が、お互いの「おこづかい」について円満に話し合い、納得のいくルールを設定するための具体的なステップと考え方をご紹介します。
なぜ「おこづかい」の話し合いが必要なのか?
共働き夫婦の場合、それぞれが収入を得ているため、どちらかの収入をすべて家計に入れ、もう一方の収入を「おこづかい」とする、といった伝統的なスタイルを取らないケースも増えています。収入を合算して管理する場合もあれば、生活費だけを共有し、残りは個人で管理するといったスタイルもあります。
どのような管理スタイルであっても、「おこづかい」という概念、つまり家計運営とは直接関係しない個人の裁量で使えるお金の存在は重要です。問題は、その「おこづかい」が指す範囲や金額、そして使い道について、夫婦間で明確な共通認識がない場合に生じます。
例えば、「ランチ代は家計から? それともおこづかいから?」「趣味の習い事の費用はどちらで負担する?」「友人の結婚祝いは?」など、日々の小さな支出から、少し大きな個人的な買い物まで、その都度判断に迷いやずれが生じる可能性があります。こうした小さなずれが積み重なると、無意識のうちにお互いへの不満や不公平感が募り、お金の話をすること自体が億劫になってしまうことにも繋がります。
共働き夫婦における「おこづかい」の考え方
一口に「おこづかい」と言っても、夫婦によってその定義や含まれる範囲は異なります。家計全体から見た「おこづかい」の位置づけを明確にすることから始めるのが良いでしょう。
- 収入合算型の場合: 夫婦の収入をすべて一つの口座に集め、そこから生活費、貯蓄、投資を行い、残りをそれぞれのおこづかいとするケース。この場合、「おこづかい」として使える金額は家計全体の余裕に左右されます。
- 生活費のみ共有型の場合: それぞれが一定額を生活費口座に入れ、残りは個人の口座で管理するケース。この場合、「おこづかい」の金額は、個人の口座に残った金額から決まりますが、共有の生活費でカバーする範囲(例:外食費、日用品など)を明確にしておく必要があります。
どちらのスタイルを取るにしても、「おこづかい」とは、夫婦の共通の目的(生活費、貯蓄、将来の目標など)のためではない、個人の自由意志で使えるお金であるという共通認識を持つことが大切です。
円満な「おこづかい」ルールを決めるためのステップ
夫婦で納得のいく「おこづかい」ルールを決めるためには、以下のステップを参考に、お互いの考えや家計状況を共有し、建設的な話し合いを進めることが推奨されます。
ステップ1:お互いの「お金の使い道」と「価値観」を共有する
まず、夫婦それぞれが何にお金を使いたいのか、何にお金を使うと満たされるのか、といった「お金の使い道」や「価値観」を正直に話し合うことから始めましょう。
「〇〇さんは、どんなことにお金をかけるのが好きですか?」といった問いかけから始め、趣味、友人との交流、自己投資(書籍、セミナーなど)、美容、ファッション、コレクションなど、具体的にリストアップしてみるのも良い方法です。
また、「自由に使えるお金」に対するお互いの考え方、「これくらいあれば安心」「この程度の金額なら遠慮なく使える」といった感覚も共有します。この段階では、金額の妥当性を議論するのではなく、お互いの願いや考えを知ることに重点を置きます。
ステップ2:家計全体の状況を把握する
次に、現実的な「おこづかい」の金額を設定するために、家計全体の状況を夫婦で確認します。収入の総額、固定費(住居費、光熱費、通信費、保険料など)、変動費(食費、日用品費など)、そして将来に向けた貯蓄や投資に回す金額を具体的に洗い出します。
これにより、家計全体にどれくらいの余裕があるのか、あるいは余裕を持たせる必要があるのかが見えてきます。この全体像を踏まえることで、「おこづかい」に回せる金額の上限や、無理のない範囲が明らかになります。
ステップ3:「おこづかい」の範囲と金額を設定する
家計状況を踏まえ、具体的に「おこづかい」として何をどこまで含めるのか、そして金額はいくらにするのかを設定します。
- 範囲の定義: 「おこづかい」に含む項目を具体的に決めます。例えば、「平日のランチ代」「仕事の付き合いでの飲み会代」「個人的な趣味の費用」「美容院やネイル代」「個人的な被服費」「書籍代」などです。何が家計から出て、何が「おこづかい」から出るのか、明確に線引きします。
- 金額の設定方法:
- 定額制: 毎月一定額をそれぞれのおこづかいとする方法が一般的です。金額は、家計の余裕度やお互いの希望、含まれる範囲を考慮して設定します。
- 定率制: 収入の一部を「おこづかい」とする方法です。収入が変動する場合でも、一定の割合を確保できます。
- 項目別: 特定の項目(例:ランチ代は1万円まで、趣味費は5千円まで)に上限を設ける方法です。管理がやや煩雑になる可能性もあります。
- 一時的な高額出費の扱い: 旅行や家電購入など、個人の希望に関わるが「おこづかい」では賄えないような高額な支出について、どのように扱うか事前に話し合っておくことも重要です。家計からの臨時支出とするか、おこづかいを貯めて賄うかなど、柔軟なルールを検討します。
ステップ4:ルールを共有し、合意する
設定した「おこづかい」の範囲、金額、そして関連するルールについて、夫婦で最終的に確認し、合意します。この際、一方的に自分の希望を押し付けるのではなく、お互いの意見を尊重し、なぜその金額や範囲が良いと考えるのか、理由を共有することが大切です。
「この金額で〇〇さんの使いたい項目はカバーできそうですか?」「△△については家計からではなく、おこづかいで対応するのはどうでしょうか?」など、確認しながら進めます。疑問点や懸念点があればその場で解消し、お互いが納得した上でルールを決定します。
円満な話し合いのための具体的なヒント
「おこづかい」のような個人的な部分に関わるお金の話は、デリケートになりがちです。円満に話し合いを進めるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 話し合いの場とタイミング: 忙しい日常から離れ、落ち着いて話せる時間と場所を選びましょう。リラックスできる雰囲気で、コーヒーやお茶を飲みながらなど、かしこまりすぎずに行うのが良いかもしれません。
- オープンな姿勢と相互理解: 「おこづかい」に関する価値観は人それぞれ異なることを理解し、お互いの考えや希望に対して批判的にならず、まずは受け止める姿勢が大切です。
- 「私」を主語にした伝え方: 自分の希望や懸念を伝える際は、「〇〇さんが〜だから困る」ではなく、「私は〜だと感じる」「私は〜したいと思っている」のように、「私」を主語にして話すことで、相手を責めているような印象を与えることを避けられます。
- 具体的な会話例の活用: 例えば、「家計全体を見た時に、月にそれぞれ〇万円くらいを自由に使えるお金として確保できそうだと考えたのですが、いかがでしょうか?」「具体的に、この『おこづかい』で、平日のランチ代や個人的な被服費、趣味にかかる費用などを賄うのは可能でしょうか?」のように、具体的な金額や範囲を提示しながら確認を進めると、建設的な議論になりやすいでしょう。
- 完璧を目指さない: 最初から完璧なルールを設定しようと意気込む必要はありません。まずは暫定的なルールを設定し、実際に運用してみて、改善点があれば定期的に見直すという柔軟な姿勢も重要です。ライフスタイルの変化に合わせて見直す機会を設けることを話し合いの中で組み込んでおくこともおすすめです。
他の夫婦の事例
「おこづかい」のルールは夫婦の数だけ存在します。参考までに、いくつかの事例(架空)をご紹介します。
- 事例A: 夫婦ともに収入を合算し、生活費や貯蓄を差し引いた金額から、毎月同額をそれぞれのおこづかいとして設定。ランチ代、個人的な交際費、趣味費など、多くの項目をおこづかいに含めています。余った分は翌月へ繰り越すことも可能とし、個人の裁量と責任を明確にしています。
- 事例B: 基本的には必要なものは家計から出し、特に使い道が決まっていない「自由なお金」として少額を定額で設定。大きな買い物や個人的な高額な支出については、その都度夫婦で話し合い、家計から出すか、おこづかいを貯めて賄うかなどを判断しています。細かい管理が苦手な夫婦に適しているかもしれません。
- 事例C: 家計全体で貯蓄目標や投資目標を先に設定し、それを達成した上で残った金額の一部を、それぞれの「頑張ったご褒美」として自由に使って良いお金とするルール。家計目標達成へのモチベーションに繋がっています。
まとめ
夫婦それぞれの「おこづかい」について話し合うことは、単にお金をどう分けるかという技術的な問題に留まりません。それは、お互いの価値観を理解し、個人の自由を尊重しつつ、夫婦としての共通目標に向かって協力するための重要なコミュニケーションの機会と言えます。
忙しい毎日の中でも、意識的に時間を確保し、オープンで正直な対話を重ねることで、お互いが納得し、安心して個人のお金を使える環境を築くことができます。完璧なルールは存在しません。大切なのは、夫婦で一緒に考え、話し合い、お互いを尊重しながらより良い方法を見つけていくプロセスそのものにあるでしょう。
今回ご紹介したステップやヒントが、共働き夫婦が「おこづかい」について建設的な話し合いを始め、円満な関係を築いていくための一助となれば幸いです。